大学に入学して東京の端っこのテレビ神奈川が見れる地域に住んでいた。夜の11時ころにインディーバンドのPVが流れる番組がやっていて、そこでSyrup16gを初めて見た。「天才」という曲で、この日に人生が少しだけ曲がった。
当時は、下北沢バンドブームでギターロックと呼ばれるシーンが盛り上がっていて、いろんなバンドがひしめき合っていた。自分もそのどれかになりたいなぁとぼんやり考えるようになったきっかけのバンドがSyrup16gだった。
Syrup16gのギターの音像は、ディレイが多重にかかっていて、最初は何を弾いているのか全然わからなくて、割と耳コピに自信のあった自分にとって非常に興味深かった。早速コピーをしてみて、毛嫌いしてたコーラスのエフェクターやカポを買った。洋楽かぶれだった自分が歌詞を意識するようにもなったし、何より自分で曲も作ろうと思った。アコギなんかロックじゃないと言っていたのにアコギも買った。
ボーカルの五十嵐隆の書く歌詞は、すごく私的でわかりやすく、意味不明でかっこよかった。なんだか自分でも書けそうに思ったけど、誰も彼みたいになれなかったし、自分もそれに成れることはなかった。
友達のアパートで恋愛話を聴きながらSyrup16gを聴いていたときも、「これは俺のことを歌っているのか?こいつ天才か?」と友達は感嘆としていた。それくらい当時の何者でもない自分達が身近に感じることができる憧れの存在だった。
syrup16gは、自分達が少し大人になった頃に解散をして、しばらくして再結成して今年フジロックフェスティバルに出る。